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シリーズ和装の人たち 武術研究者「甲野善紀」3

インタビューを通じて和装の着こなし方、素材として絹の素晴らしさ、日本の伝統についてお伝えして行きます。
前回に続き、武術研究者・甲野善紀さんのお話をご紹介します。

第3回目は、「極上の着物2」についてお話しを伺いました。

引き続き、着物についてのお話をお聞かせください。

私がふだん着ている着物は、昔の久留米絣(くるめかすり)が多いですが、袴(はかま)を着けていますので、腰から下の部分は人目に触れません。ですから、その部分は傷みやすい襟回りに回すなどの工夫をして着ています。着物は、そうやって回して使えるところがいいですね。それにしても、今、いい着物を探すのは、本当に大変になってきました。

最近は、若い人たちを見ても、外国製の薄っぺらい着物を着ていたり、時には左前に着ていたり……(笑)。今はそんな感じですね。残念です。

昨年のノーベル賞の授賞式に、羽織袴で出席した京都大学の先生がいらっしゃいました(*)。
そのときは少し話題になりましたが、着物が世界の表舞台に出る機会は、本当にわずかになってしまいましたね。いずれにしても、今の日本の着物文化は、危機に瀕していますよ。極上の着物を再び世に出すことができるような職人や着る人たちが現れるような、そんな時代が来ればいいですね。

着物が世界の表舞台に立つとうれしいですね。ありがとうございました。

*2018年12月10日、スウェーデンのストックホルムでノーベル医学生理学賞の授賞式が行われ、京都大学の本庶佑(ほんじょたすく)特別教授が受賞した。

次回は、「 着物と古武道の関係 」についてお聞きします。
(更新予定 10 / 29)

【 甲野善紀 (こうのよしのり)】

●プロフィール 1949年東京生まれ。武術研究者。 1978年松聲館道場を設立。日本古来の武術を、伝書と実技両面から研究し、その成果がスポーツ、楽器演奏、介護、工学等から注目を集め、国内外で指導依頼されている。2007 年から 3年間、神戸女学院大学で客員教授も務める。著書に『表の体育 裏の体育』 (PHP 文庫 )、『剣の精神誌』(ちくま学芸文庫 )、『できない理由はその頑張りと努力にあった』 (聞き手・平尾 文 PHP研究所 )、『ヒモトレ革命』(小関勲共著、日貿出版社 )、新刊『古の武術に学ぶ無意識の力』(前野隆司共著、ワニ・プラス)等多数。「NHK人間講座」、「爆問学問」や「世界一受けたい授業」等TV出演多数。

ホームページ: https://www.shouseikan.com/