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シリーズ和装の人たち 武術研究者「甲野善紀」1

インタビューを通じて和装の着こなし方、素材として絹の素晴らしさ、日本の伝統についてお伝えして行きます。
今回から、武術研究者・甲野善紀さんのお話をご紹介します。

第1回目は、袴(はかま)に関するエピソードを伺いました。

甲野さんは、いつも着物を着ていらっしゃいますが、洋服を着られることはないのですか?

私は、洋服、スーツなどは一着も持っていませんので、どこへ行くにも着物で出かけます。

私は、着流しで表に出ることはせず、いつも袴を着けているんですけど、最近、絹の袴の縫製のレベルがすごく落ちていて、非常にショックでした。
といいますのは、専門の業者に依頼したのに、仕付け糸を抜いてみたら、「えっ? こんなの着て、表に出られないよ!」というくらい、折り目はいいかげんだし、接ぐ場所が真ん中に見えているし……。昔、素人に頼んだとき、同じようなことが一度ありましたが、その後何十年も、そんなことはなかったのに、もうがっかりしました。

知らない人は、そんなものだと思って穿くのかもしれませんが、袴を専門に仕立てているところがそのありさまなのですからね……。袴に限らず、ほかにもいろいろなレベルが落ちてきていると感じています。今の日本、考えるべきことは多いですね。 

質が落ちてきたというのはとても残念ですね。ありがとうございました。


次回は、「 極上の着物 」についてお聞きします。
(更新予定 10 / 15)

【 甲野善紀 (こうのよしのり)】

●プロフィール 1949年東京生まれ。武術研究者。 1978年松聲館道場を設立。日本古来の武術を、伝書と実技両面から研究し、その成果がスポーツ、楽器演奏、介護、工学等から注目を集め、国内外で指導依頼されている。2007 年から 3年間、神戸女学院大学で客員教授も務める。著書に『表の体育 裏の体育』 (PHP 文庫 )、『剣の精神誌』(ちくま学芸文庫 )、『できない理由はその頑張りと努力にあった』 (聞き手・平尾 文 PHP研究所 )、『ヒモトレ革命』(小関勲共著、日貿出版社 )、新刊『古の武術に学ぶ無意識の力』(前野隆司共著、ワニ・プラス)等多数。「NHK人間講座」、「爆問学問」や「世界一受けたい授業」等TV出演多数。

ホームページ: https://www.shouseikan.com/