日本の絹を「知る」「学ぶ」「楽しむ」総合情報サイト

シリーズ和装の人たちシーズン2 デザイナー「泉千景」最終回

和装のバッグなどのデザイナーとしても活躍されている泉千景さんにお話を伺いました

今回は、デザイナーの泉千景さんの最終回です。

作品の製作以外のお話も、お聞かせいただけますか。
 私の父は陶芸をしていまして、山梨で土地を買ったんです。
 そのときは、周りは桑畑だらけだったのですが、現在は、養蚕業はほとんどされていないのだろうなと思います。
 自分が着物を着ていても感じるのですが、着崩れたときの直しも、ポリエステルなどですと、素材が固くてうまくいかないんですよね。肌触りはもちろん、帯を締めるときの音も、昔の素材と現在の素材とでは違うのを感じます。あと、お茶をしているときにも、袱紗(ふくさ)のちり打ち(茶道の作法の一つ。袱紗をさばくときに音が鳴る)で同じことを感じました。 

最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
 薄利多売、大量消費の時代が終わり、さらにコロナ渦により、人と物との向き合い方について再考する機会が求められています。
 バッグに使う生地も、手持ちのアンティーク着物も、ほぼ戦前のもので、養蚕業が栄えていた時代のものです。現代の生地に比べて柔らかで軽く、針穴も、少し揉(も)むと閉じるしなやかさです。
 祖母から母、母から私へと譲り受け、着物としての役目を終えても、いろいろなものに生まれ変わり、受け継がれていく……そのような素材はなかなかありません。
「よいものを大切に長く使う」
 元来、日本人はそうした知恵を持って生きてきました。
 品質のよい絹は、代表的なサスティナブル(持続可能)な素材です。価値観が変わっていく中、絹が再度見直されていくことを願っています。

いろいろと考えことが多い時代ですね。長時間、ありがとうございました。

泉千景さん プロフィール

和装小物制作デザイン
アートディレクター、着付け技能士 泉千景デザイン事務所代表
武蔵野美術短期大学 卒業
伊勢丹新宿店、西武百貨店等のウィンドーディスプレイデザイン、広告、カタログ、ステーショナリーメーカーの商品開発等のディレクション、デザインを手がける。 「ないものはつくる」が信条。
Faceook  https://www.facebook.com/deruvaux