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シリーズ和装の人たちシーズン2 デザイナー「泉千景」3

和装のバッグなどのデザイナーとしても活躍されている泉千景さんにお話を伺いました

今回は、泉さんの「作品の製作について」のお話をお聞きしたいと思います。
作品を作り始めたきっかけを教えてください。

 よくある和装バッグは、あまり物が入らないし、カジュアルなアンティークの着物に合う物がなかなかないんです。それで、普通の洋服用のバッグを使っていたのですが、「一閑張」(いっかんばり・紙漆細工)というものがあるのを知って、いろいろと見てみました。でもそのときは、色のトーンも暗いものが多く、あまりモダンじゃないなと……。そこで、ディスプレーの仕事でサンプルを作ったり、金箔を貼ることなどもしていましたので、そのスキルを生かして自分でも作れるかな……と思ったのがきっかけです。

製作時の手順や素材についてお聞かせください。
 まず、「一閑張」ですが、竹籠に和紙を何枚か貼っていき、ベースを作ります。表面は、きれいな模様の和紙とか手ぬぐい、着物の端切れなどでコラージュしていきます。
 素材には、もちろん絹も使います。むしろ絹がいちばん貼りやすいですね。特に戦前のものは、私の好きなアンティーク柄が多いのですが、絹の質も現在とは違っていて、ものすごく細い糸で織られた生地とかがあります。着ているときに軽いのはもちろん、竹籠に貼るときも、すごくフィットして貼りやすいんです。

そんなに違うのですか?
 そうなんです。竹籠なので編み目がありますから、空気が入らないように、素材をベトベトにしてから貼っていくのですが、戦前の絹は非常に密着します。気泡がまったくといっていいほど入らないですね。
 さらに表面を、漆や柿渋、ウレタンなどでコーティングして仕上げるのですが、戦前の絹は繊維が細く織目も細かいので、仕上がりも全然違いますね。  

なるほど、実際の製作の工程についてよく分かりました。 ありがとうございました。
次回も「作品の製作について」のお話をお聞きします。

泉千景さん プロフィール

和装小物制作デザイン
アートディレクター、着付け技能士 泉千景デザイン事務所代表
武蔵野美術短期大学 卒業
伊勢丹新宿店、西武百貨店等のウィンドーディスプレイデザイン、広告、カタログ、ステーショナリーメーカーの商品開発等のディレクション、デザインを手がける。 「ないものはつくる」が信条。
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