


シリーズ和装の人たちシーズン2 加賀ゆびぬき講師・絹糸アクセサリー作家「千明 幸代」4

シリーズ和装の人たちシーズン2 加賀ゆびぬき講師・絹糸アクセサリー作家「千明 幸代」3

新シリーズの一人目は、琵琶(びわ)の演奏者・黒田月水(くろだげっすい)さんです。
第3回目は、琵琶のことについて伺いました。
黒田さんは、子どものころから音楽が好きだったのでしょうか?
いえいえ、小学校のときから音楽は大嫌いでした(笑)。特に先生があまり好きではなかったので、授業はいつもボイコットしていました。
ですから、高校で選択科目になっても、どうしてもやりたくなかったので、音楽だけは選ばなかったんですよ。
そんな黒田さんが本格的に音楽の勉強を始めた経緯について教えてください。
NHKのFMラジオで、「邦楽のひととき」という60年ぐらい続いる長寿番組があるんです。その番組で演奏を放送してもらうためのオーディションがあるんですが、「試しに受けてみよう」と受けたら受かりまして……。琵琶を始めて3年目ぐらいのときです。
そのときの審査員の先生が、「邦楽技能者育成会」(以後、「育成会」)の講師だったんです。その後、「育成会」を受験しまして、2度目に受かりました。成績はすごく下でしたが……。きっと、私のような者を教育しなければいけない、ということだったのではないでしょうか(笑)。
何とか入学できて、1年間厳しく音楽を教えていただきました。
日本の古典音楽というのは、楽器ごとに譜面が違うんです。尺八でしたら尺八の譜面、琴でしたら琴の譜面というように分かれていて、全然違うんです。
譜面を通じて、一緒に音楽を奏でられるように教育をして、日本の音楽家を育てようというのが「育成会」の目的でした。私は36期に入学しました。
始めた当時は、音符の種類もよく分かってなくて……。音符に、例えば“付点2分音符”ってあるじゃないですか。その音符に付いている小さい黒い丸を汚れだと思って、ずっと取ろうとして、周りにびっくりされました(笑)。それくらい、何も知らなかったんですよ。
譜面をゼロから習いました。毎週火曜日、1年間通学しました。
では、琵琶についていろいろと教えていただけますか。
琵琶の弦は4本、楽譜は“4線譜”というものになります。
いちばん上が細い弦、いちばん下が太い弦。そこに、丸、三角、四角が幾何学模様のように描かれているんです。色も黒と白があります。
弦を押さえる強さによって、音階をつくるんです。
琵琶の弦ですが、いいものは国産の絹でないとできないので、私は琵琶屋さんで購入しています。琵琶は、弦をしっかり押さえるので、いちばん細い弦でも強くないといけないんです。
練習でも、絹の弦を使用しているのですか?
もちろん絹の弦を使っています。
ナイロン弦もあるのですが、絹と比べて切れにくい反面、弾き心地が悪くて使えません。それに、「切れる糸を切れないように演奏するのはとてもいい練習になるから、ふだんからいいものを使いなさい」と師匠からも言われていますので。
琵琶は、練習用を含めて六面持っています。私が現在、中心で弾いている琵琶は、日本では八丈島や大島などにしか生息していない、島桑という大木になる桑の木製です。樹齢が100年ないと琵琶は作れないので、私が持っているものが、現在島桑で作られた最後の琵琶ということになります。
ほかには、インドネシアやタイから輸入された桑の木のものが多いですね。
また、練習用ですと、欅(けやき)や桜の木で作られたものがありますが、音色は全然違います。桑の木のほうが密度が高くて硬いので、やはりいい音がしますね。
元は、ペルシャ(現・イラン)からシルクロードを渡って伝わってきたのですが、インド辺りでは紫檀などで作られていたようです。弦は、中国に入ってから絹のものが作られるようになりましたが、それまでは羊の腸で作っていたんですよ。
始めて聞くお話がたくさんあり、琵琶の奥深さを感じました。
次回は、「着物について」のお話を伺います。
黒田月水さん プロフィール
高知県土佐清水市出身。
土佐琵琶創始者・世界的彫刻家 流政之から琵琶を勧められ
薩摩琵琶の大家中谷襄水に師事。
全国琵琶楽コンクール第2位
NHK邦楽技能者育成会36期卒業
古典派元よりジャズ / 舞台芝居 / 映画音楽 / 舞踊等々音楽を手掛け、アメリカ、中国、フランス、スペイン、オーストラリアなどで演奏。
NHKFMラジオ「邦楽のひととき」に定期出演。
テレビ高知「土佐琵琶物語」
高知県観光特使 高知県土佐清水市観光特使
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