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”V” 尊/Venerable 尊い輝きは郷土の水と風から

2019年度、一般財団法人大日本蚕糸会とともに、蚕糸・絹業提携グループ全国連絡協議会は、日本における絹の歴史や文化を紹介するために、ブランドブック「26の物語で紡ぐ日本の絹」を作成しました。
takaraginu.comではWEB公開企画として、追加取材で作成した記事ととも、AからZまでのアルファベット順に更新していきます。

”V” 尊/Venerable
尊い輝きは郷土の水と風から

四国の水が支える輝き

「続日本書紀」にも「伊豫(いよ)生糸」の記述があるほど歴史のある「伊予糸」は、繰糸の方法と良質な水によって支えられています。

伊予糸独特の風合いは、乾燥繭ではなく、生繭から生糸を引く「生繰り法」を採用しており、四国山系の水は石灰質を含んでいるため、生糸を糊状に覆っているセリシンが溶け出しにくく、光沢があり、崇高で柔らかい風合いが出ると言われています。

町の歴史と文化を守る

四国山脈からの良質な水と温暖な気候が幸いし、中山間部でも桑栽培が可能だったため、古来より愛媛では養蚕農家が多く1929年頃には県内に3つの製糸工場が操業していました。

やがて安価な輸入生糸の登場により、1994年には全ての製糸工場が閉鎖となってしまいました。

そこで、町の根幹産業であった養蚕・蚕糸業の歴史と文化を正しく伝えるため、同年「野村シルク博物館」が開館。伊予糸の製造、染織講座の開催、博物館の運営を行っています。現在でも生産を続ける養蚕農家は5戸。その全てを買取り、製糸し、染織文化の情報発信につとめています。

新しい担い手を求めて

蚕の飼育は5月半ばに始まり、年6回行われますが特に人気があるのは「春繭」で伊勢神宮の式年遷宮で用いられ御神宝に使われています。「伊予の春繭で織り上げた帯は柔らかさが違う」とうたわれるほどの品質です。

この特徴ある「伊予糸」を守っていくために「野村シルク博物館」では繭からの糸作り、染色、手織について一年を通して、学べる講座を開設しています。これまで全国各地から約300名の参加があり、この講座のために移住してくる人も少なくないということです。