日本の絹を「知る」「学ぶ」「楽しむ」総合情報サイト

”S” 環/Sustainable こぼれ落ちていくものに見る価値

2019年度、一般財団法人大日本蚕糸会とともに、蚕糸・絹業提携グループ全国連絡協議会は、日本における絹の歴史や文化を紹介するために、ブランドブック「26の物語で紡ぐ日本の絹」を作成しました。
takaraginu.comではWEB公開企画として、追加取材で作成した記事ととも、AからZまでのアルファベット順に更新していきます。

”S” 環/Sustainable
こぼれ落ちていくものに見る価値

多様な副蚕糸

蚕から製品までの間に、原材料として不向きであるとされ、取り除かれていくものを副蚕糸と言います。

養蚕農家では、二匹が一緒に繭を作る玉繭、羽化してしまった穴あき繭、汚れ繭などがそれにあたり、繰糸場からは、蚕が最初に吐き出す糸で上等な糸にならない「きびそ」や、反対に蚕が最後に出した部分の「びす」などがあります。

その他流通、生産過程において、多様な副蚕糸が発生しています。

こぼれ落ちていくもの

良い繭を取るために、研究、改良を重ね、高い技術を誇る日本の養蚕ですが、どんなに丁寧に育てても全ての繭が上等な生糸の原材料になるとは限りません。

昔、製糸場の人たちは、繰糸する工程でどうしても糸が引けない繭のことを「こぼれまゆ」と呼びました。

情緒を感じる名前ですが、形状や色で優劣がついてこぼれ落ちていくものでも大事にしたいという気持ちの表れかもしれません。

「もったいない」の先へ

もともと「もったいない」という言葉にはおそれおおいという意味があり、自然や物に対して尊敬や感謝の気持を表す言葉です。

以前は利用価値がないとされていた副蚕糸ですが、現在は工芸品として和紙、ニット製品、絹シートなど、様々な用途の開発が行われています。

蚕が命をかけて作った繭をいただき、余すところなく使い切ることは、かけがえのない資源として、地球環境を守っていくことにつながります。