


”Y” 糸/Yarns かつて世界一だった日本の生糸

”X” 驚/eXcellence 門出を祝う華麗な振袖

2019年度、一般財団法人大日本蚕糸会とともに、蚕糸・絹業提携グループ全国連絡協議会は、日本における絹の歴史や文化を紹介するために、ブランドブック「26の物語で紡ぐ日本の絹」を作成しました。
takaraginu.comではWEB公開企画として、追加取材で作成した記事ととも、AからZまでのアルファベット順に更新していきます。
体の中に糸を作り出す絹糸腺があり、それを使って繭を作る昆虫を「絹糸虫」とよびます。さなぎの期間、葉などで体を包むために糸を吐いて作る種類、蚕のように多くの糸を吐いて繭を作る種類など、自然界には繭を作る蛾の仲間がたくさんいますが、日本には蚕の祖先のクワコ、素晴らしい糸を作るヤママユ(天蚕)がいます。
古代日本では「古事記」に仁徳天皇が三様に変わる虫を見るために山城に出かけて行く話があり、「日本書紀」には緑色で橘の葉を好み、形は蚕に似ている虫が登場します。
野蚕を飼育したという記録は18世紀からとなっていますが、古代から野山には「絹糸虫」がたくさん生息していたと思われます。
天蚕農家は自然の形で飼育するため、ハウスの中にクヌギ、コナラ、キヌヤナギなどを植え、日当たりと水はけの良い土地を選んで、天蚕を放し飼いにしています。
鳥や蜂などの天敵に食べられてしまうため、自然界では2%くらいしか繭になれません。そのため天蚕農家はネットを張り巡らせて、天蚕を守ります。また農薬を使わない食草の栽培、大量昆虫飼育が基本となり、途上国などでもすぐに取りかかれる環境保全型の産業です。
通常の家蚕の糸に含まれるタンパク質フィブロインは密度が極めて高いです。対して野蚕の糸の繊維には穴があいているため(多孔性)しなやかで軽く、光沢があり、保湿、保温、UVカットなどの機能性も高いといわれています。特に野外で生きてきた野蚕種には紫外線を防ぐ力が強いといわれ、研究が進んでいます。しかし糸にするのが難しく、量も多く取れないために野蚕の糸は高価になります。
[参考資料]
いのちのかんさつシリーズ4『カイコ』 (著:中山れいこ 少年写真新聞社 )