


”Y” 糸/Yarns かつて世界一だった日本の生糸

”X” 驚/eXcellence 門出を祝う華麗な振袖

2019年度、一般財団法人大日本蚕糸会とともに、蚕糸・絹業提携グループ全国連絡協議会は、日本における絹の歴史や文化を紹介するために、ブランドブック「26の物語で紡ぐ日本の絹」を作成しました。
takaraginu.comではWEB公開企画として、追加取材で作成した記事ととも、AからZまでのアルファベット順に更新していきます。
蚕は家畜化されて飼いやすく、日本には飼育の知識と経験を持つ人がたくさんいます。長い年月をかけて種の保存法が確立されているので、遺伝子組み換えをしても安心安全に管理できます。
自然に生きる生物を守るために「カルタヘナ議定書」には、遺伝子組み換え生物が交雑のないように管理するようにとありますが、大人しく飛ぶことのない蚕は他の野蚕との交雑もなく、もっとも安全といえます。
シルクはフィブロインとセリシンという純度の高いタンパク質からできていて、そのタンパク質を利用して様々な研究が重ねられています。
2000年に蚕の遺伝子組み換え技術が開発され、クラゲの遺伝子を導入した緑色蛍光タンパク質を生産する繭ができました。
蛍光タンパク質は熱に弱いので、煮沸すると白になってしまうため、蛍光色の糸を引き出すための方法が研究され、緑、赤、オレンジ色の生糸を取ることに成功しました。
コロナウイルスのワクチンで注目されている「メッセンジャーRNA」ですが、1972年に初めて蚕の体から取り出すことに成功しました。
実験動物として体が大きいこと、大量に飼育できることなどが利点として上げられています。DNAの遺伝情報を運ぶ役割をする核酸の取り出しの成功によって、ワクチン製造技術も飛躍的に早くなりました。
その他にもシルクの研究から化粧品、医療用ガーゼ、人工血管が開発され、検査キット、医薬品の研究も進んでいます。
今まで農業の分野で人間の役に立ってくれていた蚕が、これからは科学の分野でも貢献してくれることでしょう。
[取材協力]
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
[参考資料]
『カイコってすごい虫!』(農研機構)
『カイコ』中山れいこ著(少年写真新聞社)