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”E” 極/Extraordinary 薄い雲のような純白の真綿

2019年度、一般財団法人大日本蚕糸会とともに、蚕糸・絹業提携グループ全国連絡協議会は、日本における絹の歴史や文化を紹介するために、ブランドブック「26の物語で紡ぐ日本の絹」を作成しました。
takaraginu.comではWEB公開企画として、追加取材で作成した記事ととも、AからZまでのアルファベット順に更新していきます。

”E” 極/Extraordinary
薄い雲のような純白の真綿

古代から続く人々と真綿

真綿と木綿を同じ「綿」と勘違いしている方がいるのではないでしょうか。

真綿は蚕の繭からできる動物性の繊維です。日本では卑弥呼の時代から、中国への贈り物の中に真綿があったことが「魏志倭人伝」に記されています。木綿は15世紀に日本に入ってきた植物の綿花から紡いだ植物性の繊維です。そこで木から採れる綿という意味で「木」がついて「木綿」となりました。

真綿にまつわる伝説は古くからあり、古代中国では、軽くて強い真綿で戦闘服を作り、防寒はもちろんのこと、矢や刀を通さない防弾チョッキの役目も担ったといいます。

真綿がつなぐ家族への思い

昭和の初め頃まで、日本の多くの農家は養蚕を行なっており、糸繭を出荷した後の屑繭(二匹が入った玉繭、穴あき繭、汚れ繭など)を集め、母親たちは真綿を蓄えていたのです。

糸繭が一家の現金収入だとすると、真綿は女性にとって数少ない自由にできる収入であり、張り合いのある仕事だったのでしょう。家族のために着物を織ったり、娘の嫁入り支度をしたりと、母親が家族を思う気持ちが真綿から感じられるようです。

蚕の繭からできる真綿

「真綿」と聞くと真綿布団が有名ですが、真綿から手取りで糸を取り出し、紡ぎ、作られた着物が「紬」です。日本各地に残る個性的な紬は多くは染めや、絣の柄に注目されがちですが、実は真綿から引き出された糸は弾力性があり、ふわふわとした質感が魅力だと言われています。

布団と同じく、紬も手作業の工程が多いので、高価ですが、暖かいその風合いが私たちを惹きつけて止みません。

[取材協力]
西川株式会社
https://www.nishikawa1566.com/
近江真綿振興会グループ協議会

[参考文献]
『真綿の文化誌』嶋崎昭典著(サイエンスハウス)